独り暮らしラブな日常。

独り暮らしenjoy中なひろの、気儘な日常フォトログ。
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いち。

いち。

 解らないことを考えるのが好きだと思う。
 自由に、何処までも自由に意味のないことを考え続ける作業が。

 考えるのは大抵、単純作業の時。
 手は動かしているけれど、意識が暇を持て余すから、思考が勝手にするすると滑って行く。
 けれど、手は動かさなければならないから、大切なことは考えられない。
 零は、同時に二つのことが出来ない典型的男脳だった。
 考えるのは、意味のないことばかり。
 たとえば、宇宙のはじまりについて。
 たとえば、宇宙の「果て」の映像。
 たとえば、「名前」の名前。
 たとえば、線路の終わりの光景。
 たとえば…、

「へぇ。久我山って意外と哲学者。」
「……。…ぇ?」
 ぼんやりと空の雲の数を数えていたら、隣から柔らかい声がした。
 その声は零の心に掠るように触れた後、耳を優しくすり抜けていってしまい、咄嗟に意味を捉えることが出来なかった。
 抱えた膝を崩さぬまま、のたりと緩慢な動作で声の主を見遣る。
 己のものとは質の違う、真っ直ぐな黒髪が微かに揺れるのが、残像のように瞳の奥に残った。
「俺も割とそう云うの好きかも。ぼんやりしてる時とか、何となく考えてるかもしれん。」
「……なにを?」
 子どもみたいな発音に、風間は眼鏡の奥の表情をくるりと優しげなそれに変え、柔らかな猫っ毛を撫でて来た。
 途端に自然と身体が強張る。人に触れられるのは、慣れていない。
 普段、平和のシンボルの如くのほほんとしている癖に、他人のそう云う変化に風間は聡い。
「悪い。つい、癖で。」
 妹とかにすぐやっちゃうんだ、と穏やかに続けながら風間は手を引いた。

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