風間は昔話を慈しむように話す。
そう云う時、風間の「昔」に存在するものが、少し羨ましくなる。
そうやって彼の優しい部分を形作る何かで在れること。大切にされていること。憶えていて貰えること。
ふと、空に思いを馳せる。
数えていた雲は散ってしまい、もう幾つまで数えたのかも思い出せない。
あたたかな風が、二人の髪を同じように擽っては通り過ぎてゆく。
自分も誰かの優しい記憶の中に存在出来ているのだろうか。誰かの頬を少し緩ませるような、そんな薄紅色の甘い記憶の中に。
…解らないことを考えるのが、好きだと思う。
たとえば、誰かと居て心地好いと思うことの理由。
風間の体温と、自分の体温の差の意味。
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