少し遠出気味の出先で、猫の携帯ストラップを見掛け、条件反射気味に手に取ってしまったのは、何故だったのだろう。
ちりちりと優しい鈴の音が「買って買って」と聴こえてしまったのだ。
渡す相手など、風間は如何したって独りしか思い浮かばなかった。
「ぁきのは…? 同じの、一緒付ける…。買ってあげる、僕。」
風間の予想通りに、鈴をちりちりと鳴らしては頬を緩めた久我山が此方を窺って来る。
こんなもので幸せそうな顔をするからたまらない。
明らかに貰いもののストラップばかりが下げられた久我山の携帯を横目に、風間は小さく息を吐いた。
「何で。俺にこんな猫とか、似合わんでしょ?」
「似合うよ。黒猫…アキ。」
うっとりとした表情になった久我山に、頭の中が「?」で溢れ返るのを感じる。
久我山と会話をしていると、良く起こる現象だ。
「……。れーたん?」
もしもーし、と顔の前でぷらぷらと手を振ってみせる。
その指先が僅かに目許に触れると、久我山はぴくっと震えて動かなくなった。
そうだ、他者との接触が苦手なのだった、この男は。
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