なな。
普段は穏やかに誰にでも笑顔で、心の中は見せずにいられたのに、奴にだけは何故か違った。
初めて本格的に口を利いた時は、俺は理不尽に怒っていたし、それからも普通の会話と云うのを交わしたことがないように思う。
零が自分のものではなくなる。
そんな日が来るなんて、聴いていない。
そんなこと、誰も教えちゃくれなかった。
けれど、俺が如何足掻いても時間が止まるわけもなく、零は確実に新しいステージに向かって歩きはじめていた。
俺にそれを止める権利はなかったらしい。
寧ろ、止めることなんて出来なかった。それは時間を止めることよりも難しいことのように思えた。
零のことをずっと子ども扱いしていたのは、零が大人になるのが厭だったからではなく、自分がそうならなくてはいけないことや、それを当たり前に受け容れることが厭だったからかもしれない。
「敦司は何でも出来るから、悲しいね」
零の声が耳の奥にずっと残っている。
「敦司とは、ずっと一緒だね。思い出とか、そう云うのじゃなくて、ずっと」
零は常に哲学的な、雲を掴むようなことばかり喋っていたように思っていたけれど、そうではなかったのかもしれない。
「敦司のこと、スキだよ。ずっと――」
もしもあの時こう云う日が来ることを既に解っていたのなら、何故俺にもそれを教えておいてくれなかったのだろうと思う。
俺のことが一番好きだと云いながら、何時も何処かで終わりを視ていた零に、俺は気付いていた。
一過性の気持ちだとか、すぐに終わってしまう関係だとか、そう云うことではないことに零も気付いていた。
俺たちの関係は、何にも喩えられなかった。
ただ、今が続けばいいと思っていた。きっと、零も。
初めて本格的に口を利いた時は、俺は理不尽に怒っていたし、それからも普通の会話と云うのを交わしたことがないように思う。
零が自分のものではなくなる。
そんな日が来るなんて、聴いていない。
そんなこと、誰も教えちゃくれなかった。
けれど、俺が如何足掻いても時間が止まるわけもなく、零は確実に新しいステージに向かって歩きはじめていた。
俺にそれを止める権利はなかったらしい。
寧ろ、止めることなんて出来なかった。それは時間を止めることよりも難しいことのように思えた。
零のことをずっと子ども扱いしていたのは、零が大人になるのが厭だったからではなく、自分がそうならなくてはいけないことや、それを当たり前に受け容れることが厭だったからかもしれない。
「敦司は何でも出来るから、悲しいね」
零の声が耳の奥にずっと残っている。
「敦司とは、ずっと一緒だね。思い出とか、そう云うのじゃなくて、ずっと」
零は常に哲学的な、雲を掴むようなことばかり喋っていたように思っていたけれど、そうではなかったのかもしれない。
「敦司のこと、スキだよ。ずっと――」
もしもあの時こう云う日が来ることを既に解っていたのなら、何故俺にもそれを教えておいてくれなかったのだろうと思う。
俺のことが一番好きだと云いながら、何時も何処かで終わりを視ていた零に、俺は気付いていた。
一過性の気持ちだとか、すぐに終わってしまう関係だとか、そう云うことではないことに零も気付いていた。
俺たちの関係は、何にも喩えられなかった。
ただ、今が続けばいいと思っていた。きっと、零も。
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