久我山は、育ちが良いのだろうなと思う瞬間がある。
「おい。また零してる。」
「…ぇ、どこ……。…ぅわ。」
そうしている間にも、ぽろぽろとアップルパイの屑が膝や床に落ちる。口の周りもパイ屑だらけになっているものの、本人はちっとも気にしている様子がない。
久我山は今更、どこに零したのかと緩慢な動作で確認しはじめる。そうして気が逸れたせいか、手からぽろりとアップルパイが滑り落ちた。
ワンテンポ遅れて聞こえて来た小さな声は、特に慌てた風でもなかった。
チラリと表情を盗み見るも、無表情のままだ。
思わず嘆息。これは、不可抗力。
「あーあーあー。ちょっとおまえじっとしてろ。
もういい、屑払うの最後でいいし。良かったな、落ちたのが自分の膝の上で。」
アップルパイを拾って渡してやると、小さくこくんと頷いて見せた。
久我山と一緒に居ると、たまに子どもの面倒を見ているような気分になる。
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