久我山零は、とても微妙なバランスで成り立っている人間だ。
成分の配合が謎に満ちている。微妙と云うより、奇妙だ。
例えば食事。
とにかく、一緒に食べたがる。誰も居ないと殆ど食べていないであろうことは、何となく察しているところだ。
では、誰かと一緒に居たいのかと云うと、それはまた違うらしい。
彼は良く、他人との接触を嫌がる様子を見せるからだ。
接触といえども、抱擁のような大袈裟なものではない。髪についたゴミを取ってやるような、そんな些細な接触でさえ、風のない日の風車のように表情が静止してしまうのを幾度か見ている。
しかし、普段あまり表情の変化のない久我山が怯えたような顔をするのが新鮮で、ついついわざとやりたくなってしまうこともある。
その度に久我山はわざとやっていることなんて全く気付かない風に、ぴたりと動きを止め、怯えた表情になる。
そんな久我山を見ていると、つい泣いてしまうまで繰り返したくなる。
――尤も、久我山が泣いているところなど、見たことがないけれど。笑っているところすら数えるほどしか見たことがないと云うのに。
(いや、待て待て、待てよ、俺。)
…そもそも、俺は他人を泣かせて喜ぶ嗜好など持ち合わせていない。
彼から、泣かせたくなってしまうオーラでも出ているのだろうか。
今世紀最大の謎だ。
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